権利擁護・虐待防止について

特集
               
権利擁護

 障害者権利条約の批准(平成27年1月)に向けて、平成24年10月1日に障害者虐待防止法が施行され、平成28年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が施行される中、いまだ、障害関係事業所における虐待の報道がなされている現状を改善するために、あらためて権利擁護・虐待防止について、まとめてみました。
 障害者虐待防止法においては、虐待内容による分類は下記のとおりです。障害関係事業所及び従事者として、何が虐待なのか、深く受け止め、これらの虐待内容は決して行われるこのないように、各事業所では、虐待防止マニュアルの作成、虐待防止委員会の設置、定期的な委員会の開催、また、虐待防止に関する勉強会・研修会等の開催など虐待防止に努めなければなりません。従事者においては、勉強会・研修会で学んだこと(虐待内容の理解と虐待防止に関する取り組み)の実践を行うことになります。

虐待内容による分類
1 身体的虐待
 障害者の身体に外傷が生じたり、生じる恐れのある暴行を加えること、または、正当な理由なく障害者の身体を拘束すること。
(たたく、つねる、なぐる、熱湯を飲ませる、異物を食べさせる、監禁するなど。)
2 性的虐待
 障害者に対してわいせつな行為をすること、または障害者にわいせつな行為をさせること。
(裸の写真やビデオを撮る、理由もなく不必要に身体に触る、わいせつな図画を配布する、性的暴力をふるう、性的行為を強要するなど。)
3 心理的虐待
 障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応、不当な差別的発言その他、障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(脅迫する、怒鳴る、悪口を言う、拒絶的な反応を示す、意図的に恥をかかせるなど。)
4 放棄・放任による虐待(ネグレクト)
 障害者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置のほか、他の労働者による1~3の虐待行為の放置など、これに準じる行為を行うこと。
(食事を与えない、意図的に無視する、放置することで健康・安全への配慮を怠るなど。)
5 経済的虐待
 障害者の財産を不当に処分することその他、障害者から不当に財産上の利益を得ること。
(本人の了解を得ずに現金を引き出す。収入を没収する、横領する。賃金等を支払わない、賃金額が最低賃金に満たない、使用者が強制的に通帳を没収するなど。)

障害者差別解消法では、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮をしないこと」が、差別になります。
具体的には、下記の通りです。障害関係事業所も合理的配慮をおこなう努力をしなければなりません。

不当な差別的扱い
 例えば、「障害がある」という理由でスポーツクラブに入れないこと、アパートを貸してもらえないこと、車いすだからといってお店に入れないことなどは、障害のない人と違う扱いを受けているので、「不当な差別的取扱い」であると考えられます。ただい、他に方法がない場合などは、「不当な差別的取扱い」にならないこともあります。

合理的配慮をしないこと
 聴覚障害のある人に声だけで話す、視覚障害のある人の書類を渡すだけで読みあげない、知的障害のある人にわかりやすく説明しないことは、障害のない人にはきちんと情報を伝えているのに、障害のある人には情報を伝えないことになります。障害のある人が困っている時にその人の障害に合った必要な工夫ややり方を相手に伝えて、それを相手にしてもらうことを合理的配慮といいます。障害者差別解消法では、役所や会社・お店などが、障害のある人に「合理的配慮をしないこと」も差別となります。

 こうして、障害者の権利を擁護する法律が整備されていく中で、福岡県知的障害者福祉協会の権利擁護委員会は、障害者の権利擁護を推進するために、県内4地区から各2名の委員を選出、オブザーバー2名(不二法律事務所 市丸健太郎弁護士、笠松あんじゃ園 青柳壮悟氏)を加えた計10名で9月から協議を始めました。
 当面の課題は「①福岡県知的障害者福祉協会職員倫理綱領の見直し」「②虐待防止ガイドブックの作成」「③権利擁護に関する研修会の開催」です。
 現在、委員会では法的視点も踏まえながら権利擁護の全体像を把握し、権利擁護意識の欠如や虐待の背景にあるものを洗い出す作業を行っています。課題解決に当たっては現場支援員の皆さんの声を頂戴しながら反映することで、「実践の場で活用できるもの」としてまとめていきたいと考えています。ご協力をお願い致します。
   権利擁護委員会 なのみ工芸 三苫卓巳